ノマドランド 感想

ノマドとは「遊牧民」「放浪者」の意。

 

 

様々な理由から家を手放し、季節労働等を点々としながら車上生活をするアメリカの高齢者たち(=ノマド)にフォーカスを当てた作品。

リーマンショックの影響で家(というか町ごと)と夫を失ったことを原因に、ノマドライフを始めていく主人公。そんな彼女の視点を中心にしたドキュメンタリー風の映画になっている。


まずは印象。

おおよそ想像どおりだけど、この生活はやっぱりなかなかに不便で過酷だ。冬は寒いし、トイレは無いし、好き勝手にテント広げて寝泊りしちゃいけないのと同じように場所の制約もやっぱりある。

だけど、現実、この生活をしている人たちがいる。

そのきっかけは不運や理不尽だったりするかもで、その場合は仕方なくだろうし、余儀なくされているのかもしれない。そういう人たちは本当に大変だと思う。でも、中にはこの生活を選んでいる人たちがいる。そこには所謂「普通の生活」にはない魅力がある……というか、こういう生活を良いと感じる価値観がある。
(それは相対的な良さなのかもしれないのもアレなんだけども)

作中では何度か、主人公にこの生活を変えられる機会が訪れる。が、彼女はそれを選ばない。結局車上の生活に戻っていく。そこにはやはり理由があるんである。


この映画が良かったのは、ノマドの生活を過酷一辺倒に描くのではなく、ああなるほど確かにこういう価値観あるなぁ良いかもなぁという切り口も用意して、でも、やっぱり現実難しいよね、それでもこれを選ぶ人がいる、と同時に選ばざるを得なくなっている人もいるんだぞ、というような感じで、多角的にパッケージしてあることだと思う。

難しい面を踏まえてもこの生活を選ぼうとする価値観や、「普通の生活」に対するある種居心地の悪さのようなものに触れられたのが良かった。

と、同時に、なんでこの価値観の人がここまで難しい思いをしなければいけないのか、そりゃあ生活面で不便が目立つのはそれはそうだろそういうもんだろだけど、とはいえ風当あたりとか社会における立ち位置とか、いやいやこれはどうなんだろう?となる点がちらちらちらちら見えたのが気になった。


総じてとても良い映画だった。