アーヤと魔女 感想

そもそも自分があまり3Dアニメーションにわくわくしない……というのはまぁ置いといて。

それを差し引いても、うん、面白く見ることができた。

 

 

本名『アヤツル』、それじゃあ「操る」みたいじゃないの、と『アーヤ・ツール』に変わり、で、『アーヤ』と呼ばれるようになった女の子の話。

始まりは乳児の頃の『アーヤ』が孤児院に預けられるところからで、それからしばらく過ぎて『アーヤ』は10歳。青髪の魔女『ベラ・ヤーガ』と怪しげな男『マンドレーク』の住む家に引き取られる。

『アーヤ』は最初、『ベラ』に奴隷のようにこき使われてしまうんだけど、それに屈することなく、あの手この手で大人たちに立ち回り、最終的に自分の居場所を確立する、というのが全体的な流れ。

で、上映時間90分の大半を占めるこの『アーヤ』の立ち回りが本当に面白かった。

 

家に到着したときに『アーヤ』は『ベラ』から奴隷宣告に近いものを受ける。

が、それに対しての切り返しは、
「おばさんが私に魔法を教えてくれる代わりに、私がおばさんの助手になったげる!」

『ベラ』の返答は「ふん、そうかい。じゃあ決まりだ」

クソ生意気に見える『アーヤ』をサラリと流すような返答をする『ベラ』だけど、でもそれでも、こんな状況でも、一回ここで自分のペースに持っていって、それプラスで承諾を取っているんだよな。

で、『アーヤ』はその後、要求にはちゃんと従っていく。
(ブツブツ文句は言うけれど)

 

『アーヤ』が『ベラ』に殴られるシーンがあるんだけど、これは全然魔法を教えてくれないことに『アーヤ』が「嘘つき!」と言うところ。つまり『ベラ』は図星を指されている。それに逆上して殴ってしまう。こういうのは『ベラ』の中に積み重なるよなーと思った。

序盤に打った楔がじわじわと効いてくる。『アーヤ』やりおる。


あと、居場所を確立させる要素として『マンドレーク』の存在も欠かせない。

というか『マンドレーク』は最初から『アーヤ』のことがかなり気に入ってるのに『ベラ』がいる手前それを表に出せない、もしくはそれを素直に表現できない(なんでかは知らんけど)、みたいな雰囲気を感じる。回想シーンを見るに、実はお父さん説も全然アリだよな。

『アーヤ』が『ベラ』に殴られた直後には好物をそれとなく用意してくれるし、『ベラ』が留守の時にはオヤツを出してくれる。『アーヤ』が朝食をミスったときも、やり方を教えなかったのは何故か、と『ベラ』を叱責する。

たぶんここから牙城崩せるな、みたいなことを『アーヤ』は気づく。

『マンドレーク』に媚び、『ベラ』にアプローチするよう促し、『マンドレーク』から得た情報で『ベラ』にも媚びる。で、なんか色々あったようで半年後にはハッピーエンド。


本名『アヤツル』というのは作中で言われているように、やはり「操る」が由来。自分にイイ感じになるように周りの人をコントロールする才能がある……と書くとなんだか悪女感があるけど、良く言えばそれって好かれやすい、ということだよな。

『アーヤ』は「媚びる」だけじゃない。臆せず交渉して対等に話をしようとするとか、やることはやるとか、時にはいたずらしてみるとか。色々やってみて、計画的に「媚び」を使う。そういうのが良い。だから、この子が好かれやすいのも悪い気がしない。


閉ざされた世界で、自分なりにあの手この手でやっていこうとする『アーヤ』のパワフルさがとても楽しい映画だった。