ニュー・シネマ・パラダイス 感想
この映画の公開は1988年らしい。
過剰なほどにコンテンツが溢れた現在、自分が生まれるより前の作品なんて、なにか偶然的な出会いが無ければ見ようとはなりにくい。
ツイッター、というかSNSの良いところは、そういう引っ掛かりを見つけやすいところにあると思っていて、この映画についても、一方的にフォローしている映画好きの呟きをたまたま目にしたからになります。
2020/12/29の24:30より、NHKで放送されたものを鑑賞。
まず、ひとこと。とても良かった。
(あらすじを書くのは面倒なのでwikipediaをぺたり)
主人公「トト」と映画技師「アルフレード」の、友達……というには年齢がかけ離れているからしっくりこず、家族では無く、でも、仕事仲間……というとそんな淡泊なものじゃない信頼感がある、みたいな、この絶妙な距離感、関係性が作る掛け合いがたまらなく心地良くて、これがとても楽しかった。
そしてそれと同等以上に見入ってしまったのが、舞台となる村の住民における『映画』という娯楽の描かれ方だった。
「トト」が幼少期のころ、『映画』は村にある唯一の娯楽。しかも映画館自体が村に一つしかなく、スクリーンも一つだけ。そんな状況だから、映画館は村民の集会場として連日大盛況を博していた。
鑑賞の仕方も現代日本における映画館のそれとはまるで異なり、感覚としてはスポーツバーに近いように思う。
そのごった煮具合はあまりにも楽しそうで、あまりにも暖かく見える。
一つの現実空間に集った人たちが同じものを共有し、笑いやヤジを終始飛ばしあいながら感情を共有する、といった空気感。コレは、生活様式がガラリと変わってしまった今現在、特に強くノスタルジックさを感じさせる。
そして、そういうシーンが沢山あっての終盤、30年後の村のシーンは非常に寂しく映る。
テレビやビデオが普及し~~と説明されるが、この村におけるかつての映画館の役割は終わったらしい。取り壊された映画館と、それを寂しそうに見つめる高齢者との間で、無邪気に子どもが遊んでいるシーンがとても印象的だった。
コンテンツの消費され方は、この映画が描く時代以降もずっと続いていて……というか、今なお加速度的に変化している。生活様式の変化が強要された今年は特にそれが顕著だった。
個人個人が好きな時に好きなものを楽しめるよう整備されていくこと自体は便利で素晴らしいんだけど、それ一辺倒では寂しいよな、とか、この映画を見て、こういうの良いよなぁと思ってしまうのは自分に懐古的な考えが強いからなんだろうか。
人と人の現実空間での関わりが一番なんだよな、みたいに言ってしまうとすごく臭ぇなとは思うんだけど、でもまぁ根本的にはそういうものってあるよな、となる。
もちろん、アレが良い、コレが悪いみたいなシンプルな話じゃない。
でも、みんなもうオンライン飲み会とかしてないでしょ?みたいなそういうやつ。
なんというか、今、このタイミングでこの映画を放送したNHKやるなぁと思いました。