騙し絵の牙 感想

コンゲーム映画っぽい予告なんだけど、というよりは~みたいな感じ。

 

 

ざっとあらすじ。

舞台は時代の流れで不況の波が止まらない出版業界。

ここにきて社長が急逝してしまった大手出版社の「薫風社」。次期社長をめぐる権力争いやら社内改革やらでぐちゃぐちゃしている中、カルチャー誌「トリニティ」の編集長「速水」があれこれやっていきますよというお話。


で、これがとても面白かった!

「速水」があの手この手で各方面をひっかき回し、それに周りが振り回されていく様はとてもコミカルでテンポが良い。まず、コレを眺めているだけでとても楽しいのだ。

それはもちろん予告編どおりコンゲーム的な要素もあるんだけど、というよりむしろ、「速水」を中心にして、凝り固まった旧体制を切り開いていく!!というそういう味付けの方が印象強い。

時代の流れとともに目まぐるしく変わっていく「本」という文化。
それには消費者側の生活・価値観の変化だけでなく、Amazonを筆頭とした流通の変化など様々な要因があり、これをどうにかしようにもアレコレしているうちにさらに時代は変わっていってしまう。

こういう難しい問題に柔軟に対応していくためには、やはり「速水」の持つクラッシャー思想は重要そうだ。だけど、その一方で昔ながらの良さ、というか伝統というか、そういうのをバッサリ放り投げて良いわけでは無いハズで。それは「速水」自身も分かっている。だから結局は本屋巡りをしたりする。

伝統を重視して従来からの方針を守ろうとする文芸雑誌「小説薫風」チームはシンプルな言い方をすると敵サイド。なんだけど、その主張の根底には、やっぱり「本」という文化への思い入れが感じられる。

色んな立場の人間が色んな主張をするんだけど、全体的な下地としてそういう思想があるからだろうか、この映画を見ていると、じゃあ今後「本」ってどういう風になっていくんだろうと色々なことを考えさせられる。

ラスト、もう一人の主人公である「高野」も選択をする。

それも一つの可能性としていいなあと思った。


いやあ良い映画だった。